「しっかりせい、DeNA」!寄せ書きサイトにあらわれた、“卒業生ネットワーク”の本当の意味

「しっかりせい、DeNA」と、DeNAにかつて在籍された方々がメッセージを寄せてできたサイト

「DeNAが世間の耳目を集めている。悪い意味で。卒業生として、今回の事件は、大変残念だ。悔しい。「問題の大きさに身が震える。」と始まった書き出しに興味を惹かれ、そして以下の趣旨で語られるエピソードがそれぞれ熱にあふれていて、読みふけってしまいました。

私たちが愛するDeNAが、直すべきところはしっかり直し、それでも卑屈になることなく、堂々と強みとして生かして、変わっていかれるように、願いを込めてメッセージを送ります。

きっと批判も出ると思うし(netgeekには、さっそく揶揄する記事が出てたw)、件の問題については論じないですが、会社を辞めた少ない方々が、自分が逆風にさらされるリスクをおっても実名で応援するのはすごいなと思いました。

特にLITALICO取締役の中俣さんという方が書かれた記事には、創業者の南場さんに厳しくも温かく育ってもらったエピソードもつづられていて、面白く心動かされました。
(かつて読んだ「不格好経営」にほとばしっていた熱を思い出した)

そんなDeNAの「卒業生」の方々が書かれた、古巣への熱い想いを読んで、ふと思い出したのが「アライアンス」という本です。

「アライアンス」で説かれた、「卒業生ネットワーク」とは?

同書で描かれている「アライアンス」とは、従来の終身雇用に変わり、シリコンバレーで実践されている新しい雇用の考え方。
「人は企業とではなく仕事と契約し、かつ企業とも信頼で結びつく。」

リンクトインの創業者らが、組織と従業員の新しい関係性を提唱していますが、そのなかで重要性が説かれているのが、「卒業生ネットワーク」の構築です。

ある企業の「卒業生」があちこちでプロフェッショナルとして成功を収めれば、その「卒業生」ネットワークは会社に役立つ貴重な資産となる。
たとえばマッキンゼーの名声もビジネスも、その多くは同社の強力な「卒業生」ネットワークから生まれている。
ネットワーク情報収集力や優れた人材の紹介、時には売上げまでも同社にもたらしてくれるのだ。

退職した社員が、その会社に在籍していたことを誇りに思い、退職後も会社と結びつきを保ったり、周囲に会社について発信したりしてくれれば、「優れた人材の獲得に貢献してくれる」や「有力な情報をもたらしてくれる」、「顧客を紹介してくれる」「ブランドアンバサダーになる」といったメリットが出ると、紹介されています。

そんなメリットが認識されてか、アメリカではコンサルティングや会計事務所などの専門サービス業界を中心に、卒業生ネットワークの構築に力を入れて企業が増えているとのこと。
OB/OGのキャリア支援・人材紹介のためにスタッフを付けるなど、投資をしています。

P&Gなどでは、会員数25,000人を超えるコミュニティが、非公式に立ち上がっているそう。
日本でもリクルート系の企業など、OB/OGを招いたイベントが開かれている例を見聞きしたことがあります。

3社のうち2社は、今も外部から仕事をサポート

「卒業生ネットワーク」は、会社に利益をもたらすだけではなく、卒業した個人にとってもメリットを与えてくれます。
先ほど挙げた、「顧客の紹介」や「情報ネットワーク」などは、会社だけでなくそのまま個人にも当てはまりますね。

僕自身の経験を振り返ってみても、この「卒業生ネットワーク」には大いに助けてもらっています。

僕は新卒で大手電機メーカー(三洋電機)に就職してから独立するまで、ベンチャー広告代理店(ファインドスター)→NPO法人(カタリバ)と3社を経験しました。
それぞれの会社でご一緒して、退職をしてから今もお付き合いが続いている方も多く、「良い会社に入れた!」「人の縁に恵まれたな」と月並みですがつくづく感じます。

それだけでなく直近の2社とは、フリーランスとして独立した今も社外から仕事をお手伝いさせてもらっています。
さらには、かつての上司や経営者の方からお仕事を紹介していただいたり、逆に、僕もクライアントをつないだりと、フルタイムで働いているわけではない今も、良い関係を築かせてもらっていると(勝手に)思っています。

在職中は、組織体制に意見(文句)を言ったり、従業員同士のコミュニティになじめなかったりとw、どの組織でも決して「優等生」とは言えなかったですが、それでも温かく送り出してくれたこと。
オープンな組織文化を築き、そして心を配ってくださっている経営陣や社員の方々に、(こっそり)感謝しています。

理念や行動指針を共有していた仲間とは、高スピードで安心して仕事ができる

特にファインドスターグループでお世話になった方々とは、今もさまざまな方面で関わらせてもらっています。
ファインドスターの仕事で関わらせてもらっているのはもちろん、別の仕事で力を貸してもらったり、そうでなくても情報交換したりなどなど。

・会社で働き続けている人
・スピンアウトしてグループ会社を経営している人
・別の会社に転職した人
・起業した人

各方面に散らばっていますが、かつて理念や行動指針(Bestar)やダイレクトマーケティングへの考え方を共有して仕事をしていたから、コミュニケーションのスピードが早くて間違いが起こりにくい。
また、ネットワークのなかでそれぞれ評判資産があるので、仕事をお願いするのも安心です。

「同じ釜の飯を食った」人たち、そして「また一緒に仕事をしたい!」と想いを温めてきた人たちと一緒に何かをつくっていけるのは、嬉しいことです。
(ファインドスターグループが掲げる「100社1000人」構想に、微力ながらも貢献したいところ)

定年まで働くのを前提にしなくても、会社と信頼関係を築ける。新しい働き方の文化を

と冒頭のエピソードから、とだいぶ話が広がってしまいましたが、今回DeNAの卒業生が立ち上がったこと。

利害関係のない元社員の方々が会社への愛を込めて、そして真摯に状況を受け止めてメッセージを発することは、会社の評判が「地に落ちた」と言える状況のなかで、ブランドの回復に貢献するかもしれません。
少なくとも僕は、「こんな風に体を張って応援してくれるOB/OGの方々がいて素敵だな」「いろいろ問題が起こったけど、良い会社なんだろうな」と感じました。

最後に、「アライアンス」に載っていた共感する一節を。

社員が別の会社に転職した後でも、元の会社と引き続き互恵的な関係を保っていける。
そのような世界、そのような働き方の文化は、すでにシリコンバレーに出現している。
そして我々は、こうした働き方の原則があらゆる産業に、そして世界中に広がるはずだと考えている。

監訳者の篠田さんが書かれた前書きの文章「定年まで働くことを前提にしなくても会社と信頼関係を築けること、転職後もかつての会社と円満な関係を続けられること、そして中途退職者のネットワークに参加することのメリットを私は実感してきました(後略)」も素敵です。

組織と個人の新しい関係、これからどんな社会が出現していくか興味があるし、僕自身も新しい関係を切り開いていく開拓者でありたいなと考えています。

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