2005年に新卒で就職して、フリーランスとして独立するまでの10年間、3つの組織で働いてきました。
・1〜3年目:大手電機メーカー(広報・CSR)
・3〜7年目:広告代理店ベンチャー(マーケティング)
・7〜10年目:教育NPO(広報・ファンドレイジング)
業種はそれぞれバラバラだし、組織のなかでも決して主流ではない部門にいたので、「このままで、いいのかな?」と思うこともあったのですが、「この道で行こう!」となんとか自信をもって歩んでいけたのは、節目節目でこの本を何度か読んで力をもらっていたからかもしれません。
著者の高橋俊介先生は、東大→国鉄→マッキンゼーを経て、世界有数の人事組織コンサルティング会社「ワトソンワイアット」の日本法人社長を勤められた方。
現在は慶應義塾大学大学院で教授に就いて、日本におけるキャリア論の第一人者の一人です。
この本では、「幸せのキャリアを自分で切り開こうとしている人たちは、どのような判断基準で考え、どのような価値観で行動しているのか?」を、彼が多数のビジネスパーソンにインタビューするなかで7つの特徴を見いだしています。
1. 「横並び・キャッチアップ」ではなく、「差別性・希少性」をねらう
2. 「同質経験」ではなく、「異質経験」を活かす
3. 「過去の経験」にこだわるのではなく、「今後の動向」に賭ける
4. 「指導してもらえる」のではなく、「好きなようにできる」を重視する
5. 「社会的自己意識」ではなく、「私的自己意識」にこだわる
6. 「合理的判断」ではなく、「直感」を大事にする
7. 「会社の論理」ではなく、「職業倫理」にもとづいて行動する
たとえば1つ目。
幸せなキャリアを切り開こうとしている人は、横並びやキャッチアップについてはあまり関心がなく、自らの差別性・希少性を重要視していると言います。
現在、アメリカ系のネット企業に勤めているある人物は、ERP(全社的業務管理)がまだ一般的に普及する以前にその仕事につき、当時としてはまだ珍しかった資格にいち早く目をつけて取得した。それが、転職に有利に働き、その後、社内で立ち上がった最先端分野のプロジェクトメンバーに選抜される際の大きな決め手となった。
前章で紹介した広告代理店のHさんも、三年目研修で動機の活躍をみて、本流から明らかに外れている自分に気づき自費留学したが、帰国後は本流を追わずに、先端外資系企業を担当することで実績を出し、自らの差別性を高めていった。
本流から外れたり、出遅れたりした場合、キャッチアップするのではなく、あえてキャリアを横に振って、希少性や差別性をねらうという発想は、今回インタビューした人たちの間に多く見られた。(同書136ページより)
僕も、会社にとって「メイン・ストリーム」ではないキャリアをずっと歩んできました。
2社目の広告ベンチャーでは、営業として入社したのですが、テレアポでアポがとれず、訪問してもまったく売れず、営業しては全然ダメでした。
そのまま営業として頑張るという選択肢もあったのですが、「ここで勝負しても、自分の得意なところを活かせないし、他の人たちに勝てない」と思って、入社して4年目で新設するマーケティングの部署に異動を申し出て、運良くそれが叶いました。
新しい部署の仕事では、「ダイレクト・マーケティング」というBtoCの分野では確立していた手法をBtoBに応用して、検索エンジン集客や郵送・FAXによるDMなどを使って、営業の新規開拓のための見込み客の獲得を行いました。
まだ決まった「勝ちパターン」が確立していないところというのもあって、勉強したことや考えたことを自由に提案して、思ったとおりに実行することができました。
その分、失敗することもたくさんありましたが、うまくいったときはインパクトのある成果を出しやすく、昇給昇格も早いペースでできました。
では、このような傍流のキャリアで結果を出すためには、何が必要か?
それは、先ほどの7つの特徴の2つ目、「異質経験」を活かすことかもしれません。
異質経験を活かすとは、「その職種において、自分以外の人は持っていないような異質な経験をうまく活かしてキャリアをつくり込んでいこうとする発想」のことです。
同書に載っていた、転職者のケースを紹介します。
日本の家電業界でコスト管理の仕事をしながら、同時に、個人的にネット関係に興味をもち、趣味と実益を兼ねて、仕事においてもネットを活用する方向に膨らませていった。
その後、典型的なシリコンバレー系の大手ソフト会社に転職した。
それは、ネット関係のスキルがあったからこそ可能だったのだが、その会社に入って、非常に役立ったのは、むしろ、前の会社でのコスト管理のスキルだった。
アメリカのシリコンバレーのソフ制作には意外にもコスト管理のスキルが弱く、前職での異質経験が非常に希少価値になったのだ。(同書138ページより)
僕の場合も、3社目の教育NPOでは2社目で培った「ダイレクトマーケティング」の経験が大いに役立ちました。
担ったミッションは、被災地の子どもたち等のために、寄付を獲得すること。
「ランディングページ(LP)をつくって、広告からアクセスを流入させて、新規顧客を獲得する」や「データベースをもとに既存顧客をセグメントして、メール・郵送などでフォローする」など、企業ではある意味“当たり前”の施策を行ったのですが、競合となる非営利団体ではそこまで導入されていないため、責任者となった部門の寄付額(企業でいう売上)を大きく伸ばすことができました。
「非営利機関」と「ダイレクトマーケティング」という、まったく異質に思える2つの組み合わせだからこそ、価値を生むことができたと実感しています。
3つ目以降の、「今後の動向に賭ける」や「好きなようにできるを重視する」、「私的自己意識にこだわる」なども面白いのですが、このあたりで。
特に20代の方にとってはとても参考になると思うので、興味がある方はぜひ手にとられてみてください!